透き通る季節の中で
　練習三日目に、松田沙織さんという、一年生の女子生徒が長距離部に入部した。

　松田さんも中学生の頃に、長距離部に入っていたという。
　とにかく走ることが好きで、中学校のマラソン大会は、三年連続で優勝したらしい。

　その話を聞いた美咲と友紀は、早くもライバル心を燃やしている。

　私はライバル心は燃やさない。
　みんなで楽しく走れれば、それでいい。
　

　美咲と友紀は、松田さんとすぐに仲良くなった。
　この日から、四人で一緒に帰るようになった。
　美咲と友紀は、松田さんのことを、「まっちゃん！　まっちゃん！」と呼んでいる。
　
　私は、「まっちゃん」とは呼べず、松田さんと呼び続けた。




　練習八日目に、山下亮太くんという、一年生の男子生徒が長距離部に入部した。
　
　山下くんは、内気な性格なのか、口数は少なく、黙々と練習に励んでいる。
　陸上経験がないのか、足が遅くて体力もない。
　一周目は集団についてきてたけど、二周目から遅れ出し、あっという間に周回遅れになっている。
　それでも走っている。息を荒げながら走っている。走ることをやめない。
　
　まるで三年前の自分を見ているよう。
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