ろ う そ く


「じゃあ…私、帰るわ。」


我に返った私は、その場を立った。



私と武山しかいないこの家の中で、この空間の中で、今、何かが変わった。



言葉では表す事のできない、何かが。



「おぅ。気ぃつけろよ」


「うん。じゃあ…」



この時、私は怖かった。

このまま武山に会えなくなるかも知れない。

また苦しむ事になるかも知れない。


心のどこかで、そんな不安に駆られていた。






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