天満堂へようこそ -2-
「信じられませんが?いきなり後ろに来て……」

「それは謝ろう。良くここに来るじゃろう。犬を遊ばせに」

それでもこちらの事は話さない方がいいと思い、じっとおじいさんを見る。

「良い匂いがしておったが、だいぶ薄れてきたの?ここに来る度に、儂が妖を追い払っておったんじゃよ?聞いておらんかね?」

「知りません」

「そうか……結月殿は話しておらぬか」

「え?」

「ここに越してきた時に挨拶に来て以来会ってないが、こんな末端の神にも礼儀を尽くすいいお嬢さんじゃ。儂はこの辺りからは動けんでの。一つ言伝を頼まれてくれんか?」

「本当に知り合いなんですね?」

「言うてくれたらわかる。社の修理を頼むと」

「修理?うちは薬屋ですけど」

「パパッと前に直してもろうたんじゃか、台風で壊れてしもうた。あれが無いと力が出んのでな。周りに木でもあれば持つのだろうが。頼んだぞ」

そう言うとパッと消えた。
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