SNOW
「もう!どれだけ僕を悩ませたら気が済むのさ?マーシャ、今すぐ本棚から下りてよ!」

デービッドは愛らしいその顔でマーシャをキッと睨み付ける。

彼は必死だった。というのも、デービッドの家ーメリンジャール家は代々ミランカスター王国の宰相をしてきた由緒ある家柄で、父の書斎には古文書が山のようにあり、父から部屋の出入りを固く禁止されていたからだ。

もし無断で入ったのがバレれば父から雷が落ちるのは目に見えている。

だが、デービッドの説得も虚しく、マーシャは本棚の上でいきなり暴れだした。

当然その結果として本棚の本はみんな床に落ちるわけで、それを見たデービッドは両手を頭にあて深い溜め息をついた。

「あ~、もうマーシャ」

今デービッドの頭にあるのは父の怒った顔だった。

デービッドが数時間後に起こりうる恐怖を想像している間、マーシャは本棚から下りてある一冊の古ぼけた本の上に座る。

ニャー。

「マーシャ!」

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