君と罪にキス【加筆修正・番外編追加】
「この教室、あんまり物がなくて寂しいだろ?だから花があったらいいんじゃないかと思って持ってきたんだ!」
分かりやすい生徒の反応を見ても、先生はめげずにテンションを上げてしゃべる。
物が少ないのは当たり前だ。1つ上の学年になってからまだちょっとしか経っていない。
だから教室も、入学式やクラス替えが行われる前に大掃除したときの綺麗な状態のまま。
そのうちロッカーや適当なところにごちゃごちゃ私物が乗せられていくんだろうけど。
「春子ちゃんのこと、皆大切にしてやってくれ!水やりはかかせないから日直が水やり当番ってことで」
先生が春子ちゃんと名づけたそれは、小さくて可愛らしい白のマーガレット。
確かマーガレットが咲くのは春から夏にかけてだから時期的にも今がちょうどだ。でも、何で名前が春子ちゃんなんだろう?
頭を捻らせながら窓の外を横目で見ると、ほんのりピンクに色づく小さな花が満開で。
……もしかして。
今の季節が春だから、春子ちゃん?
「……はぁ」
単純な性格の先生ならやりかねない。自分の予想が当たって嬉しいというよりは落胆の方が大きくなってしまった。