君と罪にキス【加筆修正・番外編追加】
「俺も。何があってもずっと亜紀の傍から離れない」
夕日が沈み藍色に染まる病室で、誓い合った。
でも、亜紀の容態が急変して――もう、いなくなってしまった。亜紀は、ここにはいない。
おはようって元気な声も、おやすみって微笑む顔も、過去の記憶から引っ張り出すしかないんだ。
愛する人に触れたくても触れられない現実に、心臓を抉られた。
結局、俺は亜紀を守れなかった。助けられなかったんだ。
亜紀の『愛してる』を、もう聞けないなんて。
どうしろっていうんだ。寂しくて、悲しくて。いき場のない感情をどうすればいいかも分からない。
心にぽっかりあいた穴を埋めるために、誰とでもいいから熱を共有して快楽に溺れる。
その間だけは、寂しさを紛らわせることが出来るから。
そんななか、森野さんに言われたんだ。
『伊織君は誰を想ってるの?』『それじゃ息苦しくならない?』って。誰にも言われたことなかったその言葉。
森野さんは気づいていたんだ、俺のどうしようもなくグチャグチャな感情に。矛盾してる行動に。