君と罪にキス【加筆修正・番外編追加】
「あの、伊織君」
森野さんに呼ばれて顔を上げる。
「これ、よかったらどうぞ」
そっと机に置かれたのはおなじみのゼリー飲料。
「森野さんが飲みなよ。そのために買ったんでしょ」
慌ただしい文化祭の最中素早くお腹を満たせるように。
「伊織君、疲れてるみたいだから」
「…………」
森野さんにも、気づかれた。
「それ飲んで休めば少しはマシになるはず。私はもう休憩終わりだから行くね」
「あ、りがと」
「宣伝お疲れさま」
森野さんはすぐに家庭科室を出ていって、ゼリー飲料は残されたまま。
こういう何気ない優しさを、どう扱えばいいのか。
他の人からもらうのと森野さんからもらうのじゃ、何か違う感じがして。おもむろにパックを手に取って、パキリと蓋を開ける。
「……ん」
口に含んだそれは、いつもより甘い気がした。