君と罪にキス【加筆修正・番外編追加】
歪んだ夏
そこから今の関係に至る。気づけば夏が終わる手前まできていた。
歪んだ恋だってことは分かってても、引き返せなくて。
「…………」
せっかくさっき掃除当番の人が綺麗にしてくれたはずの黒板の隅に、落書きがされていた。
猫とか今流行のキャラクターとかが雑に描かれている。
「うーん、しょうがないな」
消さなくたって誰も気にしないだろうけど、一応落書きがない状態にしておこう。
黒板消しを手に取って落書きをスーッと消す。うん、これでよし。
手についたチョークの白い粉を払いながら黒板のちょうど真上にある時計を確認すると、伊織君と決めた待ち合わせ時間を過ぎている。
待っていればそのうち来るか。
ふと、いつもの笑顔が頭に浮かぶ。
「伊織君」
なんとなく白のチョークを持って、黒板に名前を書いていく。永、瀬……伊、織。
今度はその隣にあの二文字を書こうとして――――やめた。
「何やってんの、私」
自分に呆れて、すぐに名前と小さくかいた『す』も一緒に消す。