君と罪にキス【加筆修正・番外編追加】







「……おり」



「…………」


「香里、聞いてんの?かーおーりサン」


「っえ、ごめん何だっけ」


人が話している最中なのに別の方に意識を向けていたこいつは、もう一度お願いと申し訳なさそうな顔をしてくる。


香里が何を気にしてたのかなんて、考えなくてもすぐ分かる。


「伊織ー、あーんしてあげよっか」


「じゃあ次私がしてあげるね」


「1人で食べられます」


教室で数人の女子に囲まれながらお菓子を口に放り込んでいく、永瀬伊織だ。


今の状況からしても分かるように学年、いや学校で上位に入る人気者で、アイドルか何かかと勘違いしそうになるくらい女子にモテる。


そしてそんなやつが、香里の好きな男。


「……お前も、あの集団に混ざりたいわけ?」


「ち、がうよ。そんなんじゃない」


「羨ましそうに見てたくせによく言う」


「裕貴、変なこと言わないで!」


しー、っと人差し指を口元にあてて眉を顰める。そもそもお前が心ここにあらずな状態だったのが悪いんだろ。


「事実だろ」


「いいから、早く裕貴の話の続き教えてよ」


< 42 / 209 >

この作品をシェア

pagetop