君と罪にキス【加筆修正・番外編追加】
「……おり」
「…………」
「香里、聞いてんの?かーおーりサン」
「っえ、ごめん何だっけ」
人が話している最中なのに別の方に意識を向けていたこいつは、もう一度お願いと申し訳なさそうな顔をしてくる。
香里が何を気にしてたのかなんて、考えなくてもすぐ分かる。
「伊織ー、あーんしてあげよっか」
「じゃあ次私がしてあげるね」
「1人で食べられます」
教室で数人の女子に囲まれながらお菓子を口に放り込んでいく、永瀬伊織だ。
今の状況からしても分かるように学年、いや学校で上位に入る人気者で、アイドルか何かかと勘違いしそうになるくらい女子にモテる。
そしてそんなやつが、香里の好きな男。
「……お前も、あの集団に混ざりたいわけ?」
「ち、がうよ。そんなんじゃない」
「羨ましそうに見てたくせによく言う」
「裕貴、変なこと言わないで!」
しー、っと人差し指を口元にあてて眉を顰める。そもそもお前が心ここにあらずな状態だったのが悪いんだろ。
「事実だろ」
「いいから、早く裕貴の話の続き教えてよ」