君と罪にキス【加筆修正・番外編追加】
夏夜に恋
「これで来る人全員?」
「待って2人遅刻かも。連絡はきてる」
「じゃあ少しなら待ってもいいんじゃね」
あちこちから聞こえてくる和太鼓や笛の音、嬉々とした声、一際明るい屋台の通り。
まさに夏祭りって雰囲気が、ここにいる皆のテンションを上げる。
だからクラスで参加するやつが全員集まるまで待たなきゃいけないこの時間ですら、楽しいようで。
女子は普段の制服じゃなく浴衣を着て『可愛いー似合う―』『その髪型いいなぁ』とか褒め合っていて。
その様子を見ながら男は小声で誰々が可愛い、ギャップがいいとしゃべってる。
そしてここに、永瀬はいなかった。
単に今日都合が悪かっただけか、別のやつと一緒なのか。
まあ俺にとっては都合いいけどな、と思いつつ固まってる女子のなかにいる1人を視界に入れる。
いつもおろしてる髪を上げて淡い水色の浴衣を着た、香里。
派手な柄でもなく着飾ってるわけでもないのに、目を惹いた。
「なぁーに見惚れちゃってんの裕貴!」
「っわ、いきなり話しかけんなよ」