君と罪にキス【加筆修正・番外編追加】
「前にも言ったよな。俺のこと意識して欲しいって」
「裕貴。私」
「何であいつなんだよ!」
ぎゅっと腕に力を込めて抱きしめる。香里の心臓の鼓動も、伝わってきた。
「俺じゃダメなのか?そんな顔するくらいだったら、俺が、お前を幸せにしてみせる。後悔させない」
笑顔にさせるから。
「裕貴、それでも」
声が、震えてる。
「それでもね、戻れないんだよ」
「戻れないって、何」
「一度好きになったら、この感情を知らなかった頃に戻れない」
今、香里と見つめ合ってるのは間違いなく俺なのに。
「忘れられたら、良かったのにね」
香里は、俺のことを見てない。
ああ、やっぱり、いつだって。
君の視線の先に、俺はいない。