君と罪にキス【加筆修正・番外編追加】
「伊織走れ」
先輩がもたついてるうちに全力で走って、非常階段から校舎の中に逃げ込む。
足の速さ的にもう追いつけないだろうけど、念のため東棟まで移動して資料室に入った。ここならめったに人がこない。
「はーっ!めっちゃ走った」
「……類」
「――――で、伊織」
伊織が背中を預けてる壁に、トンと手をついた。
「……さっきのあれ、何」
わざとゆっくり言えば、ビクッと肩が揺れた。
「普通の声のトーンで喋ってるだけだろ。慣れろよ」
「類が急にもとの性格に戻るのは、まだ慣れない」
そうはいっても、本当の性格を隠して表向きは明るく元気なキャラをやり続けて1年以上経ってるけどな。
「俺、本来の類の性格の方がモテると思う。落ち着いてて、クールな感じ」
「話を逸らさない」
ピシャリと言えば、困ったように笑った。
正直その顔に弱いから止めてもらいたい。
「夏休み明け早々、何でああいうことになったわけ」
「廊下歩いてたらあの場所に連れていかれて、夏休み会えなかった分遊ぼうって言われた」