君と罪にキス【加筆修正・番外編追加】
「お前、そろそろ刺されるよ」
「それは怖いな」
「俺が助けに入らなかったら危なかったこと、今回だけじゃないだろ」
「類は絶妙なタイミングで助けてくれるよね」
「毎度同じことが続くからセンサーが反応するようになった。専用の」
冗談めかして言う。
何となく嫌なことが起こるかもっていう勘が半分、もう半分は、伊織のことを気にかけるようにしてるから。
「……ごめん。類」
でも、やめないんだろ。
ぽすん、と伊織の肩に頭を乗せた。
――――本当はやりたくないことでも嫌な顔せず引き受けて、笑って、泣き顔は見せず、男女関係なく魅了する。
そのくせ寂しがり屋で、どこか不安定で、平気で自分を自分で傷つける。
ほんと、バカだよな。
絶妙なバランスで成り立ってる伊織の世界。でもこうなったのには理由がある。
『伊織、類!』
俺達の名前を呼ぶあの人の声が、聞こえた気がした。