石川くんにお願い!

講義が終わりさっさと教室を出た私は、確実に目立ってるであろう相手を捜す。

女がいるところに石川くん有り

この大学では常識。探そうと思えばこの広い敷地内でも意外に簡単だと思われる。

「……いた」

ほらやっぱり。
あっさり見つけてしまったじゃないか。私ってば石川センサーが見事に働いてるっ!!


「っ!!」

待って……今石川くんロングヘアの女の子の髪にキスをしてる真っ最中じゃん!!


「綺麗な髪だね……」

「……っ」

その光景に見てるこっちも恥ずかしくなってきた。

師匠流石っす。
溢れ出るフェロモンにその子だけじゃなく周りもメロメロっす。


思わずスマホを向けたけどシャッター音でバレる…と冷静になったのでそれは諦めた。


「じゃあ……行こうか」

「っはい…」


そうこうしてるうちに優しくその子に微笑んだ石川くん

そしてそれがなんらかの合図だったようで、二人はスタスタ歩き出してしまう。


「まって……。私の講義中に1人目の相手が終わってるとするなら今日2人目!?ペース早っ!まだ午前中なのにっ!!」


腕時計を確認して小さくなっていく2人の背中を見つめた。


……これから2人が何するかなんて大人の私にはお見通し。

うん!勉強のためについて行っちゃお!!


「…ふふん」

これも弟子の宿命

そんなことを思いながら後ろからひっそりとついて行く


他の女の子達は

いいなぁ…

とか

あんなブスが相手なの!?

なんてやっかみの嵐。


それに対し男の子達は

石川またかよ

なんて彼に嫉妬していた。


すごいな……ほんとに視線をほしいままにしてる……天晴れ!師匠!


そりゃ今までは大ちゃんが居たから、気づかないふりをしていたけどやっぱりかっこいいし最高すぎるでしょ。


心の中で感心しながらも恐る恐る後をつけ続けた。


期待を裏切ることのない石川くんは、私の予想通り構内を抜けてとても静かな場所に到着。


……こんな穴場があるんですか。
っていうか密会場所はここですか。


とりあえず死角に入ろう。


いろいろ凄すぎる師匠に感動しつつ、物陰に隠れて聞こえる音だけで2人の様子を思い浮かべた。


「あ、あの……ここで?」
「嫌ならやめてもいいよ。君が……我慢できるならね……」
「ズルいっ」


うん。ズルいっっ!!!!


そりゃズルいよ!ズルすぎるよ!!
漫画じゃん!漫画の中の人じゃん。ってか漫画から出てきたんじゃないの!?やばい!録音しといたら良かった!


もう音だけで顔が熱くなり真っ赤に染まる私の頬。


この短時間でどんな名言が生まれるの!?いくつ生み出しちゃうの!メモ必須!!


色々女の子として終わってる気もするが、この興奮を抑える術が私にはわからない。


”君が我慢できるなら……”


やだーっっ!一体何のことなのですかぁああああああ!!!何を我慢させるつもりなのですかぁああああ!!!


1人で勝手に心の中で叫びながら悶えて顔を隠していた。


ただいま絶賛勉強中です。
お子様はおかえりください……


「石川く…」

女の子の声がとてもセクシーでこっちまでドキドキしてしまう。


なにしてるのなにしてるの
ダメだ心臓が爆発しそう。


しかも女の子とは違い余裕の声の石川くん

「……どうして欲しいかいってみて。」


ちょっとちょっと……なにを聞いているんですか!?


ドキドキドキドキドキドキしていると、女の子が小声で何か言ったからかなにも聞き取れないまま耳が音だけを拾い上げた。



な、なにが起こったんだろうなんて思いながらも、恥ずかしくなってきてただ私も顔を隠す


しばらく騒がしいのが続き、静寂になったと思えば聞こえたのは2人の吐息。


ナニモワカラナイ
ナニガアッタ


とりあえずメモだけはしっかりとって、”師匠名言集”と題名をつけておいた。


「あ、ありがとうございました」

そして女の子がお礼を言って、1人彼が残されるパターン。


この前もこれだったけど一緒には行かないんだな……。まぁいいや。
私も様子見て戻ろう

そう思った刹那

石川くんのため息が聞こえたと思いきや

「…朱里。」

続けて私の名前が辺りに響く


ギクッ


え……まさかね。
私のことを考えてくれてるのかなぁ。なんて自惚れとこう。


「いるんでしょ。そこに」


だけどそんな考えはあっさりとさようなら。私の存在にしっかりと気付いてのことだったらしい。


朱里ちゃん大ピンチ!!!






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