石川くんにお願い!


保健室を出た後
扉越しに聞こえる二人の声

『全然来ないと思ったら、女の子に優しくしてるなんて。恋人?』

『……違うけど……。そう思ってるのにその男に甘えてくるなんて、先生としてどうなの?』

『……もう。意地悪ね。』

『……黙って……』



うわあああああああああ
一気に38度くらいまで上がるわぁあああああ!!!!


大ちゃんの馬鹿野郎がこんな大人のDVDを持ってたけど、ほんとにそんな展開にしてしまうなんて流石としか言いようがない!!



顔が熱くなっていくのを隠せないまま保健室の扉の前で金縛りにあう私


すると

「あの……」

透き通った声がしたので顔を上げた


「あ…」


天使だ!!


私の目の前にいるのは昨日石川くんと話していた天使系男子。


首を傾げながら

「顔が真っ赤ですけど…大丈夫ですか?」

なんて声をかけられる


うわぁ……近くで見るともっと可愛い。もっと天使!!顔小さすぎ!!目が青い!!こんな子ほんとに実在するの!?


ついついじーっと見つめていると彼は困ったような顔をした


「あの……」

「あ、ご、ごめんなさい!大丈夫!熱なかったし!」

「そうですか…よかった」


ニコッと微笑まれると幸せな気持ちに包まれる


かぁあああわぁああいいいいいい!!


「翔平先輩をみかけたので会いに来たんですけど、入ってもいいですか??」

「え、あ、ご、ごめん!いまど」


扉の前から退こうとしたのだけど、ガタガタと音がするのと微かに聞こえる甘い声にハッとした


「だめ!」

「……?」


あっぶなぁあああああ!
こんな純粋そうな子に見せるものじゃない!!!私が守らなきゃ!!


「あ、あの、その石川くんはここにはいますん!」



か、噛んだぁあああああ!!


「え、え?どっちですか?」

「いや違うくて、えっといまはその」


必死で誤魔化しているにも関わらず大きくなる保健の先生の声


うわぁ…最悪……
師匠ちょっと技の発動抑えてくださいよ。


何かを察した天使は少し顔を赤くして

「お、お取込み中みたいですね。ま、また後にします……」

と視線をそらした。


「あ、うん…」

「それじゃあ…先輩。また」

彼は気まずい空気を和ませる大天使スマイルを浮かべると、背中を向けて歩き出す。

先輩って呼ばれちゃった。へへ
名前聞けばよかったかなぁ…

喜んでいたけれど、こんなことしている場合じゃないことを思い出した。


このままここにいて、弟子として誰も来ないか見張っていたいところだけど聞いてたら怒られそうだし私も戻ろう



恥ずかしさと更にきた興奮で体温が上がったせいか、先程より足取りは重いけど私も講義を受けにこの場を離れた。



石川くんファイト!


心の中で叫んで小走りすると、目的の教室にすぐにたどり着く。そしてつーちゃんの待っている指定席へフラフラと向かった。


いつも一緒なのは取る講義を合わせたからだけど、これには一つ大きな問題がある。……華奈も同じなのだ。


そしてさらに大ちゃんも考えるのが面倒くさいという理由で、私に合わせてきたから同じ。


いま思えばこれは地獄だ。彼氏と講義を合わせるのは私はオススメしない。


「つーちゃん!やっほ!!」

「あれ?朱里なんか可愛い。どうしたの?その格好」

「イメージチェンジというやつです!!全然違うでしょ!」

「なるほど……あれが原因?」


なんだか怖い顔したつーちゃんは、指を軽く指した。その方向を視線で追うと大ちゃんの姿。


そして…


「………あ……」

その隣には華奈


一緒に座るとは思っていなかったな…あ、やばい。これは痛恨のダメージ


「……浮気の相手華奈だったのか。」

「あ、わ、わかっちゃった?」

「一目瞭然。だけどよくもまぁ人の男奪って、堂々と隣同士に座れるわ。」


刺々しい彼女の言葉に私は苦笑いを浮かべることしかできなかった。


「見事にとられちゃったね……」


無理に作った笑顔とセットでそう呟いてから席に着く。相変わらず怖い顔したつーちゃんは、大きくため息をついた。


「今更こんなこというのもなんだけど、華奈は高校の時から男取るので有名だった。」

「え、そ、そうなの?」

「……私の友達もやられたことあるし、華奈のことあんまり好きじゃなかったの。朱里と会ってから変わったと思ってたけど、やっぱり人って簡単には変われないということを学んだわ。」


きつめの口調の彼女。

そうか……華奈そんな感じだったんだ。私そんな風に見えてなかったから知らなかったけれど。


「……あんた通じて仲良くできるかなとか思った自分死ねばいい。やっぱり嫌い」

イライラをぶつけるようにつーちゃんがそんなことを言いながらシャーペンの芯をだす。


ね、ねぇさん怖いっ


そのうち講義が始まったけど、続けてヒソヒソ会話をする私達。


「つーちゃんポーカーフェイスだから気付かなかったよ」

「わざわざあいつこうだから嫌いなんて言えないじゃん。いま思えば言うべきだった!!」


ああそうか。華奈と私仲良かったから気を使ってくれてたんだ。

つーちゃんはニコニコしながら

華奈好きー

なんて言わない分マシだけど、女社会ってやっぱり恐ろしいと感じた。


まぁ確かに彼女と華奈にはどこか距離があったのは間違いないかな。


それにしても……あの二人見るのはきっついよぉ。








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