石川くんにお願い!
救世主
「無事に復活しました!!のでご報告に参りました!師匠!」
熱がすっかり下がり、言葉の通り元気を取り戻した私は早速石川くんの元にやってきていた。
「……よくここにいることがわかったね。」
彼の服は肌けているわ、乱れているわでフェロモンがMAX。
さっきまで一緒にいた女の子との何をしていたのか物語っている。
「安心してね!見てないし聞いてないよ!後だけつけて場所を確認して、終わる頃を見計らってまた来たの。ナイスタイミングでしょ?」
えへへー
と笑うと石川くんは困ったような顔をする。
「視線は感じなかったからまさかつけられてるとは思わなかった」
「ふふ。凄いでしょ!私最近石川センサーついてるからね!すぐに見つけられるんだよっ!」
ドヤ!
と言わんばかりの顔で親指を立てると、彼はクスクス笑っていた。
「困ったセンサーだね。身体は?もういいの?」
「うん!すっかり!!」
石川くんが私みたいなやつの心配をしながら、服を直してるだけで視線が彼に釘付けになってしまう。恐るべし神。
「…あ、そうだ!ベッドまで運んでくれてありがとうね。お母さんってばすっごい興奮して状況話してくれてたよ」
「朱里に良く似てたよ。明るくて可愛いお母さんだったかな。」
「光栄です!ところで師匠!今日はおひまですか?」
「今日?特に用事はないけど」
「ならケーキ食べに行こうよ!お礼に奢るから!!」
私の言葉に不思議そうな顔をした彼は
「お礼なんていいよ」
と私の提案を断る。
「どうして?ケーキ嫌い?」
「いや…嫌いじゃないけど」
「女の子と約束ある?」
そんな質問に石川くんは少し考えたけれど、すぐに口を開いた。
「いや。ないよ。」
はい。来た!約束がないなら推して推してお礼するしかない!
「なら決まり!!」
すぐさま叫んでカバンから手帳とペンを出し
石川くんとケーキ
という文字を今日の日付のところに記入してそれを見せる。
「もう書いちゃったから覆せないよ!!」
「ふふ…用意周到だね。」
「そうだよ。こうしたら石川くん優しいから行ってくれるでしょ?ちゃんとお礼したいもん。修正テープは持ってないから、使わない方向にしてね」
「……ほんとに。朱里はこっちが予測できないことをするね」
だってここまでしないと、絶対断るもん。遠慮しすぎだよ。迷惑かけてるのに。
「ものすっごく美味しいケーキ屋さんに連れて行ってあげるから、楽しみにしててね」
私の中でとびきりの笑顔を向けてから、そろそろいい時間かなと腕時計を確認した。
あ、もう講義始まっちゃう
「それじゃあそろそろいってくる」
「…うん…楽しみにしてるよ」
「私も私も!!」
石川くんからそんなことを言われて嬉しくないわけがない。
自然とスキップして移動してる自分がいた。
ドンッ!!
しかしその軽快なスキップのせいで、誰かと衝突してしまう
「いたっ…」
「ご、ごめんなさい。余所見してて」
そんな声に顔を上げると、あの可愛い天使がまた現れた
「大丈夫?朱里」
心配そうに近づいてきた石川くんに、しっかり頷いてぶつかってしまった彼に頭をさげる
「ごめんね。私がちゃんと前を見てなかったから」
「いや僕もお取込み中かなと突っ立っていたので。」
……ああそうか。この子も私と同じで石川くんをリスペクトしてるから結構会いに来てるのかな?
こんなに可愛い弟子がいて師匠もさぞ嬉しいことでしょう
「……ってあれ?」
「……」
石川くんを見ると嬉しそうというよりは、困った顔をしている
「翔平先輩お疲れ様です。」
「……何度も言うけど、男に追いかけられる趣味はないんだよね」
「……だって憧れの先輩に少しでも近付きたいんですもん。邪魔はしないようにするので…」
少し拗ねたような顔に母性本能がくすぐられたよ。なんなの。か、可愛いっ!!
「それよりどこも怪我はないですか?朱里先輩」
「え、え、どうして私のこと知ってるの!?」
「会うのは3度目じゃないですか。それに翔平先輩と仲がいいみたいなので覚えとかないとって思って…」
屈託のない笑顔に
覚えられた!!
と喜んでしまったじゃないか。
だけど石川くんは大きくため息をついて
「…わざわざ覚えなくてもいいよ。」
なんて嬉しくなさそうだった
「……ご、ごめんなさい。翔平先輩が熱を出した女の子を、送っていったって噂になっていたので。どんな人かなと気になって……」
クスンと悲しそうな顔をした彼が私の目にうつる。
ってかやっぱり噂になってるのか。さすが石川くん。噂されるのが早い
「迷惑ですよね…ごめんなさい」
「え、あ、そんなことないよ!!師匠もこんな可愛い弟子がいて嬉しいはず!!」
「いや…弟子をとった覚えはないから。ところで時間いいの?朱里」
石川くんの言葉でハッとして再度腕時計をみて青ざめる
「やばい!行かなきゃ!それじゃあまたね!師匠!あと天使くん!!」
「…あ、僕、雨宮要(あまみやかなめ)って言います。」
「要くん!!覚えた!!」
私の言葉に少し困った表情をした石川くんは
「早く行きなよ。朱里」
と優しく背中を押す
「石川くんに触られたから今日の運気が10も上がった!!いってきまーす!!」
そして私はブンブンと2人に手を振り講義へと向かった。
「全く。相変わらず不思議な子だなぁ…」
「………そうですね。」
絵になる2人と話せて今日はいい日だ。ケーキも楽しみ!!