石川くんにお願い!


空いてる席を見つけたので私達は向かい合わせに座った。


…なんだか無駄にドキドキしてきた…お菓子のおまけ開けるだけなのに。


「早くご飯食べちゃいたいけど、落ち着かないからまず開けよ!!」

「ふふ…いいよ。」


振るとカタカタ音がするそれを私は石川くんに差し出す。



「…?」

「さぁどうぞ!」

「俺が開けるの?」


不思議そうに呟いた彼に、私は力強く頷いた。


石川くんに開けてもらうために見たいの我慢したんだもん。平凡な私が開けるより、運の強い師匠に開けてもらったほうがいいのが出そう。


そんなことを思いながらワクワクと箱が開くのを待つ。


石川くんはそんな私の顔を見ると、クスッと笑ってその箱からキーホルダーを取り出した。


「え…なにこれ。」


思わず間抜けな声を出したのは、箱に載っているものに当てはまらなかったから。


「…うさぎの着ぐるみを着てる狼と、その逆だね。」

「……ああそうか!これがレアのやつか。」



確かに運はかなりいい。さすが石川くんと叫びたい…。だけど私が欲しかったものと違うから複雑な気持ちもある。


「…あれ?嬉しくないの?」

「…レアは凄いけどね…私はどうしてもヒーローのやつが欲しかったの。」


はぁとため息をついて

確率の低いほうが出ちゃうなんて!

と言っても仕方ない文句を心の中で唱えた。



「…どうして?全部同じようなものじゃない?」

「…だってこれが一番石川くんに似てるんだもん。困った時助けてくれるし、離れてる時にこれ持っていたら勇気もらえるかなって。」


自然と下がる眉。だけど目の前のスペシャルランチを見て、私はお腹が空いてることを思い出す。


そうか…こんなスペシャルランチを奢ってもらって、さらに欲しいの引き当てちゃったら世の中不公平だもんね!またいつか出るはず!!


ポジティブ思考を発動させて、お盆に乗ってる割り箸を手に取ると



「…ならこれ…貰ってもいいかな?」

レアキーホルダーを見つめる石川くんがそんなことを言った。



…聞き間違えじゃないよね…すっごく意外だ…。



「全然もらってくれて構わないけど、師匠はそんなのつけるの?」

「普段はつけないけど……この狼に似てるって言ってくれたから。」



優しく微笑んだ彼に思わず胸が弾む。

「それにこのうさぎは朱里でしょ?」

「……とんでもなく恐れ多い……だけど、このうさぎ目が狼を尊敬してるって感じだし、そこは私と同じかも!!!」

「…だね…カバンにでもつけようかな。」



嬉しそうにキーホルダーを揺らす彼を見て、私は思った。


石川くんもレアものには弱いんだなと。

でも私はやっぱりヒーローが欲しいなぁ…。ってそんなことよりお腹すいた…食べていいかな。


「食いしん坊のうさぎさん。よだれが出てるよ」

「!ま、まじですか」

「うん。早く食べたいって顔してる。どうぞ」

「石川くんには隠し事できないなぁ…いただきまっす!!」


パンっ!

と大袈裟に両手を合わせて、スペシャルランチを食べ始める。


「幸せの味がしゅるー」


微笑むながら私を見つめる彼にそんなことを言うと

「こっちまで幸せになれそうだよ…」


とカレーを食べていた。


やっぱりスペシャルと言う名に恥じないボリュームと味!!お皿の上のものが無くなるまで私のお箸が止まらない。






****************



「はぁ…ご馳走様。」


お皿の上に乗ってるものは全て私のお腹の中に入った。


「お粗末様」

「まだあるもーん!石川くんにもらったプリン様!!」


残るはこの神々しいデザートのみ。


「プリン様って100円だよ?」

「…師匠が買ってくれたというだけで、五百円に価値はあがってるよ!!」

「…ふふ…なにそれ」


おかしそうにお腹を抱える彼の前で蓋を開けて、お待ちかねの黄色い宝石を私は無遠慮に頬張る。



「石川プリン様美味しい!」

「…それなに?新しい名前?」

「女の子みんな買っちゃうよ!!そう名付けよ!!」

「……朱里といたら…腹筋が鍛えられそうだよっ……」


終始楽しそうな石川くんに私もついつい顔が緩んだ。

こんな師匠をみながらプリンたべれるなんてここはリゾート地なの??


そんなことを思いながら3口目を口の中に入れた瞬間



「あ、あの…」


他の女の子に背中を押されたふわふわガールが石川くんに声をかける。


「……?なにかな?」

「今日は誰かとお約束してますか?」


こ、これは…


間違いなくあれのお誘い!!!



ゴクリと喉を鳴らして私は二人の様子を見つめた。


というか周りの女子は私を睨んでるよね…邪魔だってことかな…。


「…今日は…まだ誰ともしてないけど」

チラリと私を見た彼は、険しい顔をしている。


あ…ここは食堂だし…女の子はすごく涙目だしさすがの師匠も気を使っているのかな。


「石川くん!私荷物見てるからちょっと行ってきたらどうかな?」


できる弟子をアピールするためにそう言って笑ったら、ため息をついた石川くんは


「ならお願いするよ」


と荷物を置いたまま食堂を後にした。


派手系じゃない子もやるもんだな。
もしかして初めてを捧げます。とかもあるのかも!!!

噂では石川くんは性欲魔人だもんね……最近そんなに女の子と絡んでるとこ見てなかったから相当溜まってるかも!!もしかして…いま…


きゃー!


と勝手な妄想に私は顔を赤くする。


すると


「ねぇねぇ朱里ちゃん!」


誰かに声をかけられた。







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