石川くんにお願い!
ソッと石川くんに近付いて様子を伺うと、目を閉じて眠っている様だった。
「…何かあるかな?」
あまり物色してはいけないと思ったけれど、ここまで弱っているので何か役に立つものは無いかと軽く探してみる。だけど、何1つ見当たらなかった。冷蔵庫すら空。
「…近くのコンビニに…」
そう言って財布を持ち、一度部屋から出る。そしてそのままスマホのナビで検索をかけ、1番近いコンビニへ。
熱さまシート、スポーツドリンク、のど飴、あとは食べ物……
品揃えのよいコンビニだったおかげで、沢山買い物ができ、そのままもう一度彼の家へ戻った。
「お邪魔しまーす…」
寝息が聞こえる部屋に律儀に挨拶。弟子だからって、なんでもしていいわけじゃ無いものね。うん。
机の上に買ってきたものを置いて、時計を見るともうすぐお昼。広大くんに連絡をしないといけない。そう頭ではわかっていたけれど、まずはこっちだと石川くんの元に近付いた。
様子を伺えば苦しそうな表情で、おまけに汗でビッチョリの姿。
……こ、これは、
き、着替えさせたほうがいいやつなのでは!?
「わ、私が…師匠を脱がせる…??」
ひゃーと顔を隠してみたけれど、このまま放っておくと汗で冷えて治るものも治らない。いまは恥ずかしがってる場合ではないと意を決した。
「よし。」
まずはタオルを探し出し、腕まくり。
彼のベッドの前で正座をして手を合わせて柏手。
「……私みたいな凡人が神の体に触れることをお許しくださいませ。」
目を瞑ってそう告げて、深呼吸してからソッと師匠の服に手を伸ばした。
「ん…」
「!?」
乱れる息、赤く染まった頬、チラリと見える鎖骨、汗で濡れた髪
一歩間違えればこちらの心臓が危ないくらいの色気を、いま石川くんは放出している。
「お、お、お、落ち着け私!!!」
石川くんの熱を下げるためだと心の中で気を静め、やっとの思いでボタンを外した。
これは長期戦になりそうだ。まだなにもなし得ていないのに、私は汗をかいている。
露出された上半身。また深呼吸を1つ。タオルで彼の汗を拭いている間も、心臓のドキドキは早くなる一方だ。
「早く治りますように…楽になりますように」
いつしか石川くんの色気に対するドキドキよりも、苦しそうな顔に対する心配が勝っていき、思わずおまじないの様に唱えながら身体を拭いている自分がいた。
ソッと顔の汗も拭ってから、熱さまシートを貼っておく。そして次の課題に頭を悩ませた。
とりあえず…上半身は終わったけれどどうやって着替えさせよう。
んー…と悩んだけれどふとキツく締められたベルトに目がいく。これはさすがに苦しいんじゃないかと、外すべくソッと手を添えた。
「…えっと」
いけないことをしてるみたいだけど、これはあくまで師匠のため!そう何度も言い聞かせてカチャカチャとベルトを外す。
しかし、人のだと中々うまくいかない。
「もう、外れてー!」
カチャカチャと金属が擦れ合うことが響いた。
「あ、」
やっとのことで外れる!と思ったその瞬間
グッとベルトに触れている手を握られた。
「え、」
もちろんいまこの部屋には私と石川くんしかいない。恐る恐る顔を上げると、とても色っぽい顔した彼が私をジッと見つめているではないか。
「あ、こ、これは!断じて違うの!!!苦しいかなっておもって!襲おうとしたわけじゃないんどよ!本当だよ!」
必死に言い訳をしたけれど、すればするほど怪しい。だって、ボタンを外したせいで肌けた上半身、ベルトは外してる最中。
いまこの場に第三者が現れれば間違いなく私が彼を襲っていると勘違いされる状況だろう。
「あ、あのね、落ち着いて聞いてね…石川くん汗が凄くて」
「そうだね…ここは…家だから汗をたっぷりかいたほうが良いかもね…」
話が噛み合わないと考える暇もなく、掴まれていた手を引っ張られ、ベッドに乗り出したと思えばそのまま景色が反転。
どさっと音がすれば妖艶すぎる石川くんが私の瞳に映り込んだ。
この状況ってもしや…
押し倒されてる?