石川くんにお願い!
要くんの怒り


どうしたらいいんだろう。
この状況。


私の質問が悪かったのかな?


石川くんが

「………」

フリーズしてしまった。


カチコチ師匠だ。動かないよ。
私、そんなに難しいこと聞いてしまったかな。
もうかれこれ5分くらいこんな感じ。


「え、っと…あの。石川くん…」

「ごめんね…少し待ってね。」

律儀にちゃんとした答えを探してくれているのか、また考え込んでしまう。


……君のことが好きだから。


私は図々しくもそんな言葉くると思っていた。
そんなわけないのに。ごめんなさい。石川くん


「…師匠!私が悪かったです!!」

「……え?」

「質問がものすごく悪かったの!もう考えなくていいから!ね?」


でも…という彼の言葉を遮って

「石川くんは、優しいからこうやって目をかけてくれてるんだよね?」

と自分で答えを見出した。



正直、やってしまったと思う。
だって、私みたいな凡人が芸能人レベルの石川くんに、カマかけるのがそもそもの間違い。


もはや私達の間に恋愛感情が生まれるなんて、奇跡しかないのに。


「朱里」

「え、あ、はい!」

「どうしてか…わからないけど、」

「うん…」

「君が特別だってことは間違いないから。」



そうやって思ってる最中に、この言葉。

私の頭は混乱寸前だった。


一体どういう意味なの!!?
なんて恐ろしいくらいモヤモヤが残る。


私が眉間にシワを寄せたのを見て、石川くんは優しく笑うとおでこにキスを落とした。


「すごく…特別なんだとおもう。」


……誰か。
誰か!!!


彼の心を教えてください!!!


そう心の中で大声を出したけど、だれも教えてはくれなかった。




****************





そんなことがあった次の日。
私はボーッと学食で考え事をしていた。


昨日の事件がすっかりと噂が回ってしまった大学内では、女の子達が私を見るたびヒソヒソヒソヒソと悪口。


いや、悪口かわからないけど目がこわいから多分そうだと思う。


「つーちゃんまだかな…」


さっき彼氏さんから電話があったので、彼女は外に行ってしまったのだけど


さすがにこの視線の中に1人はきつい。


ご飯もいつの間にか完食してしまって、お箸を置いたその時。


バンッ

と机が揺れた。



「朱里先輩」


現れたのはにこやかに笑っているのに、ものすごく怖い天使。


「…か、要くん…」

「お話ししたいんですけど、いま大丈夫ですか??」


人がいるからだろう。顔は天使モード。
だけど怒りが隠しきれていないせいで、裏の顔が私には見える。



「…あ、えっと…」

「言い方を変えますね。さっさといますぐ裏庭に来い」


最後の方だけ小声で周りに聞こえないようにした要くんに、私は勢いよく頷いた。


ニコッと笑った彼はそのまま指定した方向へ歩いていく。


そりゃもう。怒ってるとは思っていた。
要くんは絶対怒ってると。


でもまさか裏庭に呼び出されるなんて…


ゴクリと息を飲んで静かに席を立つ。


つーちゃんには連絡入れておこうとスマホを取り出し、メッセを送っておいた。


………ああ…誤解を解く前に怒らせてしまったよぉ……


そんなことを考えて歩いている途中

遠くの方で華奈を発見する。


講義でわかってはいたけど、彼女はちゃんと来ていた。大ちゃんは休みだったけど。


ある意味すごいよね………


一瞬時が止まったけど、要くんの怖い顔を思い浮かべ、ハッとして少し小走り。


裏庭、裏庭、


もう余計なことを考えて立ち止まらないようにと、リズムを刻みながら進んで行く。



そしてその裏庭に付くと不機嫌そうな要くんが、ギロリと私のことを睨んでくれた。


「遅い。」

「…え、っとあ、ごめんなさい。」


見事なくらい人がいない場所。
…ああここからは怖い方しか見れないな
ともう諦める。


「……お前が男だったらボコボコにしてやりたい。この場で…」


そしてやっぱり裏の方に怖いことを言われてしまった。


予想通りだ……




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