借金のカタに取られました
高級料理店で、女と食事をするのは慣れている。

社長になってから、付き合った女は、航平を金持ちだと認識しており、少しでもカジュアルなお店に連れて行くと、見るからに機嫌が悪くなった。

高い店に連れて行っても、喜ぶのではなく、当然のような顔をして、食事をした。

会話をしていても、高いアクセサリーの話や、海外旅行の話ばかりで、航平にとっては、それは「おねだり」に聞こえて、冷めていった。

しかし、今日の食事は新鮮で、どんな料理が運ばれてきても、目を丸くして、味わい、口に入れた瞬間、目を閉じて味わっている顔を見ることが出来た。

ぎこちないテーブルマナーも、真剣にこなしているのを見ると、可愛らしくて仕方なかった。

強制的に習わせている習い事も、全く反抗せずに、真面目に通っているようだし、いつもリビングでテキストを広げて、予習や復習をしている。

まるでスポンジが水を吸うように、何でも吸収し、与えている側としても、やりがいがある。

ただ、夜の調教は、骨を折る。

無理矢理やれば、簡単なのだが、相手はガチガチで、知識もなければ、覚悟もない。

あれでは、男が出来たときに、酷い目に遭うだろう。

徐々に慣らせていかなければ、セックスについて、今後、良いイメージにはならない。

とても、良い物だと思って欲しいし、身体と心が同じであって欲しい。

バージンを稀少化し、相手を束縛し、執着しても困るし、決して武器として使って欲しくない。

世の中にはバージンキラーの男も多い。それが目的で女を次々と騙して、一度寝ると、興味が無くなり、次から次へと手を出す物もいる。

そんな男には引っ掛かって欲しくない。

冷静な心で、冷静な身体で、男を見極めて欲しい。




その夜、ベッドに入ると航平が覆い被さってくる。

焦るけどどうにも出来ない。卒業までは、最後までしないという言葉だけを信じて、覚悟を決めて目を閉じているとキスをされ、ねっとりと舌を入れられる。

千那は習ったとおり、一緒に舌を動かして受け入れる。それだけで終わりかと思っていたら、キスをしながら片手で上半身を撫でられる。

「うっ」と驚きの声をあげた。

しかし、そんな声は無視され、難なくパジャマの前ボタンを外される。

ざわざわとした感覚が身体を襲い、くすぐったくて身をよじる。

「お前、Bもしたことないんだな」とにやりと笑う。

「くすぐったいのは最初だけだ。すぐに慣れてくるし、俺が慣らしてやる。ったく、だからバージンは面倒なん
だよ」と言うと両手の平で胸を覆いながら優しく撫で、首筋にも舌を這わせる。

胸もくすぐったいが、首筋もくすぐったかった。

頭の中で真子も彼氏とこんなことをしているのだろうかと思うと、信じられなかった。

どこが良いのかが、さっぱり理解出来なかったからだ。

胸が触られて気持ちがいいなんて本当なのだろうか。ただくすぐったいだけなのに。



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