-宙の果て-
私達は、そそくさとその場を移動した。

はぁ、怖かった。何も言ってこない限り、ああいう人達とはかかわらないのが一番だよね。

「おーい、杏樹。いつまでひっついてるつもり?」
「へ?……あっ、ごめん!」

不意に声をかけられ、樹の腕をつかんだままだったことを思いだした。私は慌てて手を離す。

ギャラリーに気をとられてすっかり忘れてたよ。ああ、恥ずかしい。

何となく目を合わせるのが憚られ、私は軽く俯いた。アスファルトの地面を見つめながら、映画館のあるショッピングモールまでひたすら歩く。

その間、無言。

うわ、これも逆にキツい。

私は何とか会話をしようと、先に見えるカフェを指差した。

「ねぇ樹。私、映画見終わったら彼処のパンケーキ食べたいなぁ」
「げっ、まさかそれも俺の奢り!?」

ふふ、反応よろし。どうせだからお金だしてもらっちゃおうかな?

「うん、よろしくー」

カフェの前を通りすぎると同時にショッピングモールが見えてきた。私はスキップしながら樹の先を行く。

「おい、流石にそれはやりすぎだろ。割り勘にしよう、な?」

そう言って慌てながら追いかけてくる樹に、私は振り返って「やだよっ」と舌を出した。
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