-宙の果て-
高校時代の友達のことを思い出しながら、私はそそくさと廊下を歩く。

全く足を遅めることなく講義室の前まで行き、息を整えて扉を開いた。 

中に入るともう半分以上席がうまっており、外の景色がよく見える私の指定席(勝手にそう呼んでいるだけだが)にも、別の人が座っていた。

うぅ、残念……。

仕方なく後ろの方の空いた席を探す。

しかし、不良っぽい怖そうな人たちが隣に座っていたり、講義前だというのにイチャイチャしているカップルの後ろだったりと、空いていても「いや、ちょっとそこは……」と言いたくなるような場所ばかり。

ええい、神様の意地悪!いつもより五分遅れただけで私にこんな仕打ちをするのですか! 

「どっか静かに講義受けれそうな席、ないかなぁ?」
  
気づけば一番後ろまで上ってきてしまっていた。この辺りだと人も少ないけど、黒板が全然見えないという難点がある。

はぁ、仕方ない。教授の声を頼りに勉強するか。

私はため息をつきながら、一番後ろの列の、背の高い男子生徒が一人座っているだけの席に腰かけた。 

鞄を下ろしてもう一度ため息をつく。すると、それに気づいた男子生徒が私に話しかけてきた。

「君も遅れてきたの?」
「はい。この講義、人気あるってこと忘れてました……って、樹!?」

私は思わず大声をあげた。

だって、そこに座っていた男子生徒は…………


「はは、久しぶり。俺のこと、覚えててくれたんだ」


忘れるも何もそこに座っていたのは、ずっと会いたかった友達、藤崎樹その人だった。
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