-宙の果て-
出会い-three years ago
「そんなところに立ってないで、こっちに来なよ」
はは、と笑ったその人を見て、私は彼が自殺を決意していたのではないと悟る。
でも、そうでないならいったい何をしているんだろう?
こんな夜中に、人気のない高台で、桜の大木の下に立って、おまけに手には太いロープを持っていて。
自殺意外に、あり得ないような気がするんですけど。
「あのぅ、僭越ながら、何をされているのでございましょうか……?」
不信感丸出し、といったように、私は馬鹿丁寧に口を開いた。
彼は答える代わりに小さく頷いて、こちらに向かって手招きをする。さっきの言葉通り、こっちに来いという意味らしい。
一瞬迷ったが、抗って襲われても怖いので大人しく彼のもとに移動した。
私が近づいてきたのを確認すると、彼は手に巻いていたロープをするりとほどいた。そして、「えいっ」と声を出して満天の星空にそれを投げ掛ける真似をする。
何がしたいんだろう、いよいよ訳が分からない。
「えっと、これは何ですか?……」
恐る恐る問いかけると、彼はもう一度明るく笑った。
「さっき、出会い頭にも言ったじゃないか。『星を捕まえてみないか?』ってさ」
唖然。何それ。完全にジョークの類いかと思って総スルーしてた。
まさか本当にそのロープで星を捕まえる訳じゃあるまいな、青年よ!?
私は口をポカンと開けながらただただ彼を見つめた。
しかしそんなことはお構い無し。彼は桜の木の枝に「よっ」と反動をつけて登った。
「簡単さ、やり方が分からないのなら教えてあげるよ。まず、このロープをしっかり握る。そして勢いをつけて回しながら、ここから飛び降りる。同時に回したロープをあの星のどれかに向かって、狙いを定めて引っ掻ければ、あっという間に星が捕まえられる。ロープにつかまっているから街に落ちて死ぬこともない」
彼は私を見下ろして、にやり、と笑った。
「あのですね。そんなこと、現実にはあり得ない話で……」
「うん、そうだね。君の言う通りだ」
「あなたは、あの、もしかして死ぬつもりなんですか?」
「だろうね。さっき俺の言ったことをそのまま実行したら、俺は落ちて死ぬ」
「……よく平然と言えますね」
「はは、ついでに言えば、落ちた衝撃で頭が石榴みたいに割れるだろうね」
はは、と笑ったその人を見て、私は彼が自殺を決意していたのではないと悟る。
でも、そうでないならいったい何をしているんだろう?
こんな夜中に、人気のない高台で、桜の大木の下に立って、おまけに手には太いロープを持っていて。
自殺意外に、あり得ないような気がするんですけど。
「あのぅ、僭越ながら、何をされているのでございましょうか……?」
不信感丸出し、といったように、私は馬鹿丁寧に口を開いた。
彼は答える代わりに小さく頷いて、こちらに向かって手招きをする。さっきの言葉通り、こっちに来いという意味らしい。
一瞬迷ったが、抗って襲われても怖いので大人しく彼のもとに移動した。
私が近づいてきたのを確認すると、彼は手に巻いていたロープをするりとほどいた。そして、「えいっ」と声を出して満天の星空にそれを投げ掛ける真似をする。
何がしたいんだろう、いよいよ訳が分からない。
「えっと、これは何ですか?……」
恐る恐る問いかけると、彼はもう一度明るく笑った。
「さっき、出会い頭にも言ったじゃないか。『星を捕まえてみないか?』ってさ」
唖然。何それ。完全にジョークの類いかと思って総スルーしてた。
まさか本当にそのロープで星を捕まえる訳じゃあるまいな、青年よ!?
私は口をポカンと開けながらただただ彼を見つめた。
しかしそんなことはお構い無し。彼は桜の木の枝に「よっ」と反動をつけて登った。
「簡単さ、やり方が分からないのなら教えてあげるよ。まず、このロープをしっかり握る。そして勢いをつけて回しながら、ここから飛び降りる。同時に回したロープをあの星のどれかに向かって、狙いを定めて引っ掻ければ、あっという間に星が捕まえられる。ロープにつかまっているから街に落ちて死ぬこともない」
彼は私を見下ろして、にやり、と笑った。
「あのですね。そんなこと、現実にはあり得ない話で……」
「うん、そうだね。君の言う通りだ」
「あなたは、あの、もしかして死ぬつもりなんですか?」
「だろうね。さっき俺の言ったことをそのまま実行したら、俺は落ちて死ぬ」
「……よく平然と言えますね」
「はは、ついでに言えば、落ちた衝撃で頭が石榴みたいに割れるだろうね」