その恋、あと3センチ
学校外、いや。学校内にも。
私たちの関係のことを伏せているらしい。
まぁ、受験や卒業の時期でそれどころではないよね。
先生と、校長先生、教頭先生、私だけの秘密。
いいのかな、これで………
私だけ幸せになっている気分で、なんだかもやもやする。
「ごめん桜。私これから親戚集まってご飯なんだぁ」
「私も。これから引越しの準備しなきゃ」
「うん、私もこのあと予定あるから大丈夫だよ」
「ごめん!また近いうち連絡する!集まろ!」
「うん、ありがとね。また」
愛ちゃんと美香ちゃんはそうして帰っていった。
私はそんな2人に手を振ると、木の木陰に座った。
本当は、先生の教室に行こうと思ったけどやめておいた。
行ったら、泣き崩れてしまいそうだったから。
「桜」
「あっ……青くん」
誰かと思った。
「隣いい?」
「どうぞ」
青くんは私の隣に座ると、ふぅ、一息ついた。
「これから会えなくなるね」
「うん。」
正直、青くんと会えなくなるのは寂しい。
だって、この学校にきて初めてできた友達だから。
「まぁ、すぐ会えるでしょ。
県外って言っても隣だし」
「うん。そうだねっ!」
精一杯、笑った。
「ところで青くん、その人は……」
青くんの後ろからにゅっといつだか見た金髪のお姉さんが。
「え?あ。また…………
ごめん桜。また連絡する」
青くんはその人にげんこつを落とすとそう言って行ってしまった。
"また連絡する"か。
大丈夫。
私は大丈夫。
みんながいるもん。
「おねーちゃぁーん!」
「ねーちゃん!」
「おい、翔馬。百華。走るな」
「ふふっ。元気ねぇ」
「もー、みんなで来たのー?」
「当たり前よ、あなたの晴れ姿だもの」
「もう…」
走ってきた翔馬と百華と手を繋ぎ、遥斗とお母さんの元へ。
「もう、大丈夫?」
「うん。大丈夫よ。」
お母さんの言葉に笑顔で答える。
「今日はお祝いよ。桜何食べたい?」
「えー?
じゃあ、ハンバーグがいいかな」
「ふふっ。じゃあお母さんが愛情込めて作るわよぉ」
「俺もハンバーグすき。ねーちゃんないす」
遥斗はそう言って私の荷物を持ってくれた。
……いつのまにそんな技を覚えたの。
「俺もっ!」
「私もっ!」
翔馬と百華は可愛らしく笑う。
「じゃあ、遥斗買い物よろしくね」
「はっ!?母さん行けよ」
「私は家で愛情作ってるわ」
「なんだよそれ…」
「あははっ。私も行くから。遥斗一緒に行こうか」
「あらそう?よろしくね」
結局私が行くんだ……。
でもなんだか、それがしっくりくるような来ないような。