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両親とタクシーに乗り、会場のホテルに到着した。
「櫻井様でございますね。ご案内いたします。」
スーツの男性に案内され、私たちはエレベーターに乗って最上階のレストランへと向かう。そこが顔合わせの会場だ。
「灯里、緊張してる？」
母親が微笑みながら聞いてくる。
「そりゃ緊張するよ。結婚相手に初めて会うんだから。」
「それもそうね。お母さんも顔合わせの時に緊張したわ」
エレベーターのドアがスラリと開く。
「昔みたいな自由な結婚に憧れた時期もあったけどね、でもお見合いしたおかげでこんな素晴らしい娘に恵まれたんだもの。」
エレベーターホールの大理石の床を歩きながら、母親は嬉しそうに言った。
「だから、灯里だって運命の相手と結ばれると思いなさい。」
レストランの入り口をくぐり、案内された窓際の席には、すでに、何人かが座っていた。
「櫻井でございます。」
父親のあいさつに、座っていた初老の男性も立ち上がってお辞儀をする。
「百川です。こちらが妻の雅、長男の聖也です。今は大学の3年ですので、再来年には勤めにでます」
「よろしくお願いします。百川聖也です。」
男性に促されて、隣の若い男の人が立ち上がる。
短すぎず長すぎもしない黒髪に、スッと鼻筋が通った涼しげな顔立ち。
この人が私の将来の旦那になるのだ。
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表紙・目次

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