spicy◇candy
二つ三つ、流れゆく駅の景色を見ていると、電車がどれだけ偉大かという事がわかる。鉄道という手段を俺は素直に褒めたい。

じっとしている退屈さ故に、隣が気になる。倉井は今日も違う世界に出かけている。それを邪魔しないよう、そっと見守っていたら、突然、

「ねえ、佐藤君」

彼女の今までよりハッキリとしたボイスを聞き、一瞬耳を疑った。俺の普段の声と同じ声量だ。

あのボソボソと話す特徴はどこへやら。彼女はつり革を握りしめ、俺へきちんとした口調で質問をしてきた。
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