spicy◇candy
フェンスの連なる屋上の壁は、やはり俺の背丈よりも、少し高く感じた。青空は果てなく広がっているが、雲がぽつぽつと太陽を隠す。

今の俺に、恐ろしく似ていた。上手くいこうとしている生活を、不器用な感情が邪魔をする。そして、その太陽を人間に置き換えたらそれに値するのは……藤谷だ。

いつの間にか完全に隠れた太陽の代わりに、空を真っ黒に埋め尽くすのは、とても不器用な雨雲だった。

俺はしばらく、ただぼやけた視界で屋上に佇んでいた。そして、床にぽつぽつと水滴が垂れる。

雨が降る。そして、その雨は俺の涙となり、情けなく流れていた。こんな経験で泣くなんて初めてだった。
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