spicy◇candy
俺は、揺らいだ視界の中に確かな存在を捉えた。親友が今にも飛びかからんばかりの勢いでこちらを見ている。真紀の顔の中には説教でもしたそうなもどかしい表情が宿っていた。

確かに彼は俺の近くまで猛ダッシュで駆け寄った。そして、涙でくしゃくしゃの頬に鋭い痛みが走る。彼は俺の頬にこれでもかというほどビンタをくらわせていた。

「一体お前は何を考えている……早く中に入れ、授業が始まるぞ」

俺は子供のように頷いた。クシュッ。小さなくしゃみに俺は吹き出してしまった。いつの間にか真紀も笑っていた。

屋上には、しばらく俺達の怠惰な笑い声だけが響き渡っていた。
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