spicy◇candy
彼は、屋上で見せた笑い方と同じ笑いを見せた。やはり、こいつとの仲はこれからも壊していきたくない。誰からも壊されたくない。亀裂など二度とごめんだ。

そう思い、真紀の説明を熱心に聞き、メモを取っていたら、ガラガラと扉の開く音。反射的に真紀は椅子から立ち上がる。俺もワンテンポ遅れて立ち上がる。

目の前に立っている人を見た途端、今までにない緊張感を覚えた。俺と真紀どちらにも似ていない、そんな人が強ばった顔で仁王立ちをしている。

「我らがサッカー部キャプテン瀬戸内武都(セトウチ・タケト)先輩。お前も挨拶しろ」

紹介を受けた俺は高鳴る鼓動を抑えつつ、ただただ低く、低く頭を下げた。武都先輩は何も言わずに、俺の横を素通りして着替えを始めていた。
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