spicy◇candy
帰り道、俺は教室の中で意味もなくぼんやりとしていた。ただ、脳の片隅に、昨日の先生の元気のない顔が過る。そして、職員室に行き、彼本人に確かめたくて、立ち上がった。

「待ちなさい。私も同行させなさい」

藤谷の偉そうな声が背中にのしかかる。別にいいが、無駄口をたたいて、自分だけ先生の好感度を上げようとするのだけは防がなくては。

「勝手に付いてくればいいだろ」

返事もあっさりとした俺だったが、彼女は何があったのか、隣で不機嫌そうな顔を絶やさず歩いていた。きっとこいつなりの悩みを先生にぶちまけるつもりなのであろう。

……そんな予想を超越する事がこの後に控えているとはまだ思いもよらなかった。
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