spicy◇candy
放課後の職員室など、当然初めてだったため、転校初日に似た緊張が身体中を駆け巡る。藤谷は自分の心配で精一杯だったのか、一声もかけずに扉をノックした。

簡潔な挨拶と共に俺は、大崎先生のデスクまで歩み寄った。

大人らしくシンプルなそのデスクには、文房具を閉まっておくべきケースと、電話と、俺達への教育に必要不可欠な教科書が数冊しか置いていなかった。

ただ、藤谷の視線はデスクではなく、先生だけを見ていた。それも、俺を見た時のように挑戦的な意を込めて、何かきつい宣告をしそうな。

「先生、いや父さん。あの話はなんなのよ?私、認めてない」
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