spicy◇candy
彼女の放った一言に、俺は景色の全てがスローモーションになった気がした。椅子に座っていた先生の顔がみるみるうちに曇っていった。

周りの先生たちの行動が、すぐに遠い動きとなり、遠い音となる。これが強い衝撃の一種なのか。俺は先生と藤谷を交互に見た。

「ここであんな話を持ち出しては、何も知らない佐藤君が困惑するからやめると約束しただろ」
「雄大は、どうでもいいでしょ?大体、私の気持ちも知らないで何であんなこと言ったのよバカ……」
「親であり、先生であるこの自分にバカとはなんて言い草だ!」
「うるさいわよ、このバカ!!」

……真紀、先輩。これがどうやら先生のお悩みだそうで。しかしそれを部の皆に話す気にはなれなかった。
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