spicy◇candy
職員室を出た後も、彼女は後味悪そうに別れを告げ、帰っていった。先生も、帰ってくれとだけ言っていた。部室に行こうと足を動かそうとしたが、やはり行く気が起きなかった。

行かないと、なんの部活にも入部ができない。真紀とは生活に差がついてしまう。正直、それだけは嫌だった。必死で歩を進め、部室の手前までき来た。

真実を伝えなくてはならなかったが、あれほどまでの話をそう気安く口に出来るほど俺も軽い男じゃない。真紀の、練習試合での輝きが脳裏に過る。

あの姿に、支障が少しでも出たら本人にも武都先輩にも、大目玉を食らうだろう。それに怯えて中にすら入れなかった。
< 57 / 107 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop