spicy◇candy
藤谷は、あの脳内花畑の1面が微塵も感じられなくなっていた。そのせいか、物静かで倉井のようなおとなしさをまとってきたように見える。

それほどまでに先生+親との喧嘩が持ちこたえたのだろう。明かりを付けると、二人きりの空間が、仕上がったかのような空気に即座に変換された。

制服姿の俺とコイツは、どちらからともなく会話が出てこなくて気まずさの真骨頂にいた。これが女子とのお泊まり。いくら女友達とはいえ、初めて部屋に男子以外を連れ込んだのだから。

その空気を破ったのは、藤谷の携帯から流れた、唐突な通話音だった。
< 65 / 107 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop