銀木犀
第1章 母校

僕は今、以前通っていた高校に来ている。


それほどいい思い出があったわけでもなく、だからといって悪い思い出があったわけでもない。


そう、どちらかというと、何の「感慨」もないと言ったほうが正解かもしれない。


だが、いざ来てみると、作り付けの棚、生徒の体の割に小さな教室、床の材質はこうだったっけ? おっ! 自動ドアになってる……などと意外に楽しんでいる自分を見つけた。


やはり少なくない年月を過ごした施設というものは、人に何らかの感慨をもたらすものらしい。
< 1 / 52 >

この作品をシェア

pagetop