銀木犀
第1章 母校
僕は今、以前通っていた高校に来ている。
それほどいい思い出があったわけでもなく、だからといって悪い思い出があったわけでもない。
そう、どちらかというと、何の「感慨」もないと言ったほうが正解かもしれない。
だが、いざ来てみると、作り付けの棚、生徒の体の割に小さな教室、床の材質はこうだったっけ? おっ! 自動ドアになってる……などと意外に楽しんでいる自分を見つけた。
やはり少なくない年月を過ごした施設というものは、人に何らかの感慨をもたらすものらしい。