銀木犀
第4章 動揺
「ああ、りょうたを待ってんだ。……佐伯は?」
「フフ……私はトモコを待ってんの……」
(フフ……あ〜あ……)
またワザと苗字で呼んでる……。
まわりの女の子も男の子も、私のことは名前で呼ぶ。
しかも呼び捨てで。
それはまあいい。
ここで問題なのは、そんな公然化した私の呼び方を、何故、彼だけが苗字で呼ぶのか?
ということだ。
なんでだろ?
なんか傷つくなあ……。
嫌われてんのかなあ……。
私、何かしたかなあ……。
それでも私は、自分に割り当てられたキャラクターを崩さず、ただニッコリと微笑んで返した。