銀木犀
沈黙だよ……。
なんでだろ?
彼とは上手く話せない。
何かされた覚えもした覚えもない。
苦手になる理由もないんだけどなあ……。
彼は私にとって不思議な存在だった。
真面目そうなグループとも会話したり本の貸し借りをしてるし、ちょっと粋がってる子達と連れ立って街を歩いてるのを見たこともある。
女の子にも自然と溶け込んでるし、先生のウケもいい。
だけど、いつも輪の中にいるようで、いつもひとり……そんな印象があった。
つまりつかみ所がないのだ。
家族構成も殆どの人が知ってるし、何かを隠してる風でもない。
でもなにか、彼のなにかが見えなかった。