銀木犀
そう思いにふける私の、左に三つ先に彼は座って本を読んでいた。
タイトルはここからでは見えないが、いっつも違う本を読んでいる。
一度、さりげなく隠したが、ブックバッグを持ってるのを見かけた。
手作りっぽかったなあ……。
ふいに風が吹き、カーテンがゆっくりと舞い上がった。
その刹那、金木犀の香りが私の腰掛けてる机の方まで漂ってきた。
「私ね、金木犀よりも銀木犀の方が好きなんだ。」
と、私はつい言ってしまった後に慌てた。
な、なんであいつの前でこんなこと言っちゃったんだろ?
お、女の子っぽいじゃん!
キ、キャラじゃないじゃん!
ど、どうしよ……。