銀木犀
「あーあーわかった! わかった! 三十歳まで独身だったら貰ってやるから!」
「あ? こっちこそ貰ってやってもいいよ? ていうかムコ養子にしてやってもいい」
僕らは十八歳になっていた。
高校を卒業し、二人とも地元の別々の中小企業に勤め始めた。
僕とユカの関係は、恋人同士になることもなく、現在に到っている。
お互い、別に恋人がいればそっちに掛かりきりになり、離れてしまえば、また一緒に行動するということを繰り返していた。
不思議なのは、恋人を作る時期も一緒ならば別れる時期も一緒だったということだ。
だから必然的に一緒にいることが多くなり、周りの友達たちには、僕らは付き合ってるんだと思われていて、違う旨を伝えたときの友人たちの驚く顔をよく見た。
そして僕らもその顔を見るのが楽しみだった。