銀木犀

「あら? 今日は早かったじゃない? デートはもう終わり?」


お母さんはのんきにせんべいを頬張りながら、勝手口の方に首だけまわして言った。


「うん、もう終わり」


二人で声を合わせながら、僕もズカズカと入り込む。


お母さんはユカの後ろにいる僕を見て「あら、藤田君、いらっしゃい」と言ってくれた。


いつも普通に何事もなく迎えてくれて、慌てるわけでもなく、ことさら自然に挨拶してくれる。


ユカの彼氏になるヤツはきっとこういう風にいつも迎えて貰えるんだろうな……。


僕は少しだけ、嫉妬に似た感情を抱いてる自分に驚いた。


今まではこれが当たり前だと思っていたが、明日にでもこの幸せが、他のヤツに渡ってしまうことだってあるんだ。


僕はその時、どうすればいいんだろ……?
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