銀木犀

国語の時間になる。


いつもだったら大好きな時間。


今日はちょっと気重だった。


でも、もうどうしようもない。


開き直るしかない。


ブリブリするしかない……。





先生が来る。


挨拶を済ませ、開口一番「はい、課題集めまーす」と言った。


初老の先生が、課題を忘れてくれる事を一心に願っていた私の、むなしく小さな願いはこの時霧散した。


ああ、神様……。


「四十二、四十三……。あれ? 誰だ〜二人ないぞ〜」


私はこの先生の間延びした喋り方が好きだった。


独特の間で読む、短歌や随筆が好きだった。


他の子達は「眠くなる」って嫌ってたけど。
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