銀木犀
「だ〜れ〜だ〜」
怒ってるのか冗談なのか判らない口調にしぶしぶ私は席を立った。
遅れて左に三つ離れた席の人物もノロノロと立ち上がる。
「な! お、お前たちか!」
先生は今まで聞いたことのない早口でそう言った。
無理もない、私とアイツの国語好きは、授業に参加したものなら誰でもわかる。
贔屓ではなく、先生が頻繁に授業中発言を促す二人。
二人だけで授業中発言させられた事もある。
その二人が、よりによって可愛がってる二人が、課題を忘れて来たのだ。
「……後で職員室な」
先生はそう言った。
私は先生を傷つけた事を深く後悔した。