銀木犀

そっか……あの頃からだったんだなあ……。


ウチへの道すがら、私はそんなことを思い出してた。


そして突然に、ホントに唐突に、今更なんだけど判った。


私が何故アイツに惹かれて、それで何故恐怖を感じていたのか?


それは……私とアイツが似ているからなんだと思う。


自分の汚い部分も、ずるい部分も、全て相手にも同質のものが存在している。


一緒にいる事で私達は常に裸の自分と付き合わなければならない。


羞恥心の為に服を着る霊長類が、常に裸の自分を見なくてはならないのだ。


その恐怖だ。





そして人はナルシストだ。


ナルシストと言う言葉よりも「自己愛」というほうが適切かもしれない。


人は自分自身を大事にしないと生きていけない。


私にとって彼は居心地のいい存在でもあったのだ。
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