銀木犀

車の助手席のドアを閉める。


ユウジさんがチラっと私の手元を見たのがわかった。


そのまま何も言わず、車をスタートさせる。


次の角を左に曲がれば私達の新居へ。


右に曲がれば遠回りになっちゃうけどポストがある。


何も言わなくても、私が最後に選んだ人は、きっと右に曲がってくれるはずだ。


私はオンボロのホンダシビックの挙動に合わせて、右側に、運転席側に、体重を傾けた。
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