銀木犀

「はい、試験終了です。手を止めてください。試験官が集めに来ま〜す」


試験官の声にふと我に返る。


今まで僕を取り巻いていた教室の雰囲気は一変し、見たこともない人たちが座っているのに気づく。


となりにいたりょうたも、トモコと談笑しているユカも消えていた。


気づくと解答用紙はもう僕の手元から消えていて、集められた束の一部になっていた。


簿記の試験会場。


僕の母校。
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