銀木犀

(試験受けに来たのに何やってんだろ……)


苦笑いしながら校門を出る僕に、車がスーッと横付けしてきた。


「おかえり〜。お疲れ様! 試験、どうやった?」


ウインドウ越しに笑いかける妻。


「おとうちゃん、おかゆり〜。おしご〜と、おちゅかれちゃま〜」


娘は娘なりにねぎらってくれる。


まあ、わかってはいないと思うのだが。


「うん、全部埋めたけど、ちょっと届かないかなあ……」


「そっか……まあ、次行ってみよ〜」


僕はこの妻の明るさにいつも助けられている。


僕とは正反対のタイプ。


(なあ、ユカ? これが答えだよな。僕らには正反対の人間が必要なんだよな)
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