銀木犀
それだ……その『フフ』だ。
僕が苦手なのは。
僕があえて苗字で呼んだのを見透かしてる余裕の笑み。
男女問わず『ユカ』と呼ばれる彼女を、あえて苗字で呼ぶ僕の、近寄ってくんなという意思表示を見透かしている。
そして見透かした上で、傷ついた顔もせず次の言葉を繋ぐ……。
この余裕が憎たらしい……。
しばらく沈黙が流れる。
外からは野球部の掛け声が遠い世界のように響いている。
窓から入ってくる風が、ふわっと白いカーテンを揺らし、昼の名残を残した太陽は、中庭にもう長い影を作っている。
初秋の学校。
夏と秋のそれぞれの顔を持つ季節。