爆発まで残り5分となりました
震える唇をぐっと噛み締めて、悠真は私たちに背を向けた。
「悠真……?」
私が気になって行こうとすると、「来んな!!」と怒鳴られてしまった。
その直後、地面にぽつりと、一つのシミができる。
やがてそれが、自分のものだと気付いたとき。
悠真は一度だけ、振り返った。
「……もう、やめてくれ」
震えた声。拳のほどけた手。弱々しい笑みが、月明かりで照らされる。
月の光が差し込む暗い武道館。
ドアノブも握らず、ドアも押さず。
彼はドアを"すり抜ける"と、
足音も立てずに、消えてしまった。