イジワル御曹司に愛されています
合間に唇を触れ合わせながらの、近い会話。


「ひとりで?」

「得意だろ?」


…いつもの独り言は、無意識の産物です。

意地の悪いことを言うわき腹を、拳で叩く。一度、甘いキスをしてから、都筑くんが微笑んだ。

間近で見つめ合う、その中になにか、自分たちでもわからないサインが通ったみたいに、次の瞬間、力いっぱい抱きしめ合って、深く唇を重ねて。

熱っぽい手が身体をなぞるのに身を任せた。


「なにか言って」と彼が言う。

私は困って、「なにを?」と聞き返す。

汗の浮いた身体。都筑くんの匂いのするベッド。片時も私を離そうとしない腕。


「なんでもいいんだって。いいとかやだとか、もっととか」


どれも言いづらい。

への字口になった私の額から、都筑くんが笑いながら、濡れた前髪を指で梳いて、よけてくれる。

首筋に、じゃれつくようなキス。


「なんでしゃべってほしいの?」

「千野の声聞きたい」


いたずらを封じようと、向こうの頭を抱きしめた。そのときわかった。


「さみしい?」


腕の中の身体が、一瞬動きを止める。

それからふっと力が抜けて、すりつけるような甘えたキスが、耳の後ろやうなじに降ってきた。


「うん」


王様は、ずっとひとりぼっちだったのだ。




「…あのさあ」

「ごめん、ごめんなさい、本当に」


なにを言われるかわかったので、先に謝った。

湿り気を残した熱が、まだふたりの間を漂う中、腰までブランケットをかけた都筑くんが、腕の中の私に向けて低い声を出す。
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