イジワル御曹司に愛されています
叔父さんの声音にぴりっと鋭さが増し、男の人たち含め、室内が緊張した。
「だったらなんで、兄貴はお前にそんな大量の株をやったんだ? 俺に会社を任せたいなら、最初から俺に渡せばよかったんだよ」
「それも叔父さんが先に裏切ったからだ。母さんのことだって」
「あの女のことはお前もよく知ってるだろ。病床の旦那を気遣いもしねえで、夜がさみしいって自分のことばかり考えてるバカだよ」
「そこにつけ込んだんだろ!」
「兄貴もいなくなったことだし、相手するメリットは俺にはもうない。お前がしっかり面倒見てやれよ。じゃないとまた、ほかの男を探しに行っちまうぜ」
都筑くんが息をのんだ。怜二さんがそれを見て、にこりと満足げに笑む。
「ま、それ書いてもらえれば、俺が引き続き世話してやらんでもない」
「…この譲渡先の子会社って、叔父さんの会社だった?」
「俺の意向を汲んでくれる会社、になったんだ」
ぎゅっと都筑くんの手に力がこもった。
周到で容赦ない計画が、知らないところで動いていたのを知って、ショックに違いない。大事なお父さんを亡くしたところに、この仕打ち。
信頼していた叔父さんからの、この仕打ち。
そんなのって、ないよ。
じっと黙り込んでいた都筑くんが、ふうっと静かな息をついた。ペンが書類の上を走り出す。
──なんか、疲れた。
ぽつりと吐かれた声を思い出した。
都筑くん。ダメだよ。
ダメだよ都筑くん──…。
彼がぴくりと手を止めて、振り返った。私が背中の服を、つかんだからだ。
「ダメだよ、書いちゃ」
「千野…」
「お父さんから譲り受けたんでしょ、大事なものでしょ」
都筑くんの目が、迷いに揺れる。それでもたぶん、もういいや、という気持ちのほうが強い。
私は手を伸ばし、都筑くんからペンを取り上げた。
「だったらなんで、兄貴はお前にそんな大量の株をやったんだ? 俺に会社を任せたいなら、最初から俺に渡せばよかったんだよ」
「それも叔父さんが先に裏切ったからだ。母さんのことだって」
「あの女のことはお前もよく知ってるだろ。病床の旦那を気遣いもしねえで、夜がさみしいって自分のことばかり考えてるバカだよ」
「そこにつけ込んだんだろ!」
「兄貴もいなくなったことだし、相手するメリットは俺にはもうない。お前がしっかり面倒見てやれよ。じゃないとまた、ほかの男を探しに行っちまうぜ」
都筑くんが息をのんだ。怜二さんがそれを見て、にこりと満足げに笑む。
「ま、それ書いてもらえれば、俺が引き続き世話してやらんでもない」
「…この譲渡先の子会社って、叔父さんの会社だった?」
「俺の意向を汲んでくれる会社、になったんだ」
ぎゅっと都筑くんの手に力がこもった。
周到で容赦ない計画が、知らないところで動いていたのを知って、ショックに違いない。大事なお父さんを亡くしたところに、この仕打ち。
信頼していた叔父さんからの、この仕打ち。
そんなのって、ないよ。
じっと黙り込んでいた都筑くんが、ふうっと静かな息をついた。ペンが書類の上を走り出す。
──なんか、疲れた。
ぽつりと吐かれた声を思い出した。
都筑くん。ダメだよ。
ダメだよ都筑くん──…。
彼がぴくりと手を止めて、振り返った。私が背中の服を、つかんだからだ。
「ダメだよ、書いちゃ」
「千野…」
「お父さんから譲り受けたんでしょ、大事なものでしょ」
都筑くんの目が、迷いに揺れる。それでもたぶん、もういいや、という気持ちのほうが強い。
私は手を伸ばし、都筑くんからペンを取り上げた。